2018年パートタイム・有期雇用労働法改正について
弁護士 安部史郎
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年6月29日に成立し、8本の労働関係法が改正されました。「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」に名称が変更され、短時間労働者のみならず、有期雇用労働者に関する規律についても統合されることになりました。その改正内容について、概要を示します。
パートタイム・有期雇用労働法の改正は、いわゆる「同一労働同一賃金」の議論に端を発しています。我が国で議論されている「同一労働同一賃金」とは、正規労働者と非正規労働者との間の不合理な待遇差を解消することを目指す概念とされており、「同一価値労働に対して同一賃金を支払うべき」とするものではないことに注意が必要です。
従前、有期雇用労働者の不合理な待遇差については、労働契約法20条により規定されていましたが、パートタイム・有期雇用労働法改正に伴い、同条は削除されることになりました。
短時間労働者及び有期雇用労働者と通常の労働者との間では、@職務内容(業務の内容及び責任の程度)、A職務内容及び配置の変更の範囲、Bその他の事情を考慮して、不合理と認められる待遇差が禁じられます。いわゆる「均衡待遇」が求められています。
通常の労働者とは、正社員(無期雇用のフルタイム従業員)であると考えられます。
不合理性の判断は、基本的に個々の待遇ごとに行うことになります。ただし、複数の待遇を総合的に調整し、総額で均衡を取るよう工夫されていることもあり、そのような場合の考え方については、議論があります。
@職務の内容と、A職務の内容及び配置の変更の範囲が、通常の労働者と同じ短時間労働者及び有期雇用労働者(職務内容同一短時間・有期雇用労働者)については、通常の労働者と同じ待遇にすることが求められています。いわゆる「均等待遇」が求められています。
実務上、職務内容同一短時間・有期雇用労働者と認められる労働者は決して多くはないと考えられ、個別の労働者が上記要件に当てはまるか否かについては、労使で見解が分かれることも想定されます。
事業主は、短時間・有期雇用労働者に対し、雇入れ時に、待遇内容や待遇決定に際しての考慮事項について説明しなければなりません。また、短時間・有期雇用労働者から求めがあった場合には、通常の労働者との間の待遇差の内容及び理由を説明しなければなりません。
各種手当等については、その趣旨を使用者も明確に把握していない場合や、複合的な性質を有する場合もあると思われます。使用者には、まず待遇の詳細を把握し、従業員に対して説明できるよう準備することが求められます。当該説明がされているか否か、されているとして適切な内容か否かは、当該待遇差の合理性判断に際して、重要な判断材料になります。
2018年12月28日に「同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省告示第430号)が定められ、パートタイム・有期雇用労働法の施行とともに適用されることになっています。
基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理といった個々の待遇ごとに、「均衡待遇」「均等待遇」の合理性を判断しており、実務上参考になります。
パートタイム・有期雇用労働法は、2020年4月1日から施行されます。ただし、中小事業主については、2021年4月1日から施行されることになっています。
以上