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コラム

「中小企業・小規模事業者の支援制度のご紹介
〜経営革新等支援機関から支援を受けるメリットについて〜」

弁護士 長森 亨

 債務の負担が重く経営を改善したい!新事業を立ち上げたい!海外に事業展開したい!このような中小企業・小規模事業者のために、専門家による支援などを受けることができる制度があります。

 様々な経営課題を抱える中小企業を支援するため、平成24年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う専門家を「経営革新等支援機関」として認定する制度ができました。

 当事務所でも、本コラム執筆時において、4名の弁護士が経営革新等支援機関として認定を受けています。

 借入金の返済負担等が重く経営を改善したい中小企業・小規模事業者は、経営革新等支援機関の支援を受けて、経営改善計画を策定し、経営改善に取り組んだり、経営改善に関する指導・助言を受けたりすることができます。

 新たな事業を創業したい、新たな事業計画に基づき設備投資をしたい、海外に事業展開したいという中小企業・小規模事業者は、経営革新等支援機関の支援を受けて、事業計画を策定したり、事業に関する指導・助言を受けたりすることができます。

 このように、認定を受けた支援機関からの支援を受けることにより、経営状況が明確化されるとともに、策定される計画の実効性に一定の信用力が担保され、金融機関からの信用度も上がることになります。また、こうした支援機関からの支援を受け、信用力が担保された計画を実施することで、各種の優遇措置を受けることができます。優遇措置には@特別な融資・保証制度の利用が可能になる、A特別な補助金の利用が可能になる、B特別な税制措置を受けることができるといったものがあります。

 以下では、認定支援機関からの支援を受けること自体への援助(補助金)制度(下記1)を説明した上で、支援を受けた場合に利用できる@融資・保証制度(下記2、3)、A補助金制度(下記4、5)、B税制措置(下記6)の例について説明します。  なお、これら制度の内容は頻繁に変更される可能性がありますのでご注意下さい。

経営革新等支援図

1. 経営改善支援
 借入金の返済負担等、財務上の問題を抱えていて、金融支援が必要な中小企業・小規模事業者の多くは、自ら経営改善計画等を策定することが難しい状況になります。そこで、本支援制度を利用することで、経営改善計画の策定とその後のフォローアップ支援を経営革新等支援機関から受けることができ、費用の3分の2(上限:200万円)までの補助を受けることができます。

【支援内容】
 条件変更や新規融資などの金融支援が必要な中小企業・小規模事業者が、認定支援機関の支援を受けて経営改善計画を策定する場合、経営改善計画認定支援に要する費用について、総額の3分の2(上限200万円)まで補助を受けることができます。

【支援対象】
@借入金の返済負担等の映協による財務上の問題を抱えている
A自ら経営改善計画等を策定することが難しい
B認定支援機関による経営改善計画の策定支援等を受けることにより金融機関からの金融支援を見込める


2. 信用保証協会からの保証料引下げ(経営力強化保証制度)
 中小企業が経営革新等支援機関の支援を受けながら、経営改善に取り組む場合に、信用保証協会の保証料を減免(概ね0.2%)し、金融面だけでなく、経営状態を改善する取組をサポートする制度です。

【支援内容】
・保証限度額 2億8000万円(無担保保証は8000万円)
・保証割合 責任共有保証(80%保証)
ただし,100%保証の既保証を同額以内で借り換える場合は,例外的に100%保証
・保証期間 運転資金の場合は5年以内,設備資金の場合は7年以内
既保証を借り換える場合は10年以内
それぞれ据置期間は1年以内
・保証料率 一般保証における保証料率から概ね0.2%引き下げ

【支援対象】
@金融機関と経営革新等支援機関から支援を受けること。
A自ら事業計画を策定し、計画の実行と進捗の報告を行う中小企業者であること。


3. 経営支援型セーフティネット貸付・借換保証制度
 経営支援型セーフティネット貸付は、一時的に業況が悪化している中小企業・小規模事業者に対して、日本政策金融公庫・商工中金が融資を行う制度です。
 経営革新等支援機関の支援を受けている場合、基準利率より最大0.6%の金利引き下げを受けることができます。
 借換保証制度は、保証協会の保証を利用した複数の債務を一本化して、月々の返済負担を軽減させる制度です。

【セーフティネット貸付の支援内容】
・貸付限度額 (中小企業事業)7.2億円、(国民生活事業)4800万円
・対象資金 設備資金、運転資金
・貸付期間 設備資金 15年以内、長期運転資金8年以内
・貸付金利 基準金利(3月1日現在(中小)1.45%、(国民)1.95%)
ただし,運転資金のうち,以下の条件に該当する場合,金利引き下げを行う。
@厳しい業況にあり、認定支援機関等の経営支援を受ける場合
基準金利−▲0.4%
A雇用の維持・拡大を図る場合 基準金利−▲0.2%
@・Aともに該当する場合 基準金利−▲0.6%

【支援要件】
@運転資金による利用であること。
A認定支援機関等の経営支援を受けること。

  • 詳しくは中小企業庁の紹介PDFを参照して下さい。

4. 商業ものづくり中小企業・小規模授業者 試作開発等支援補助金
 きめ細かく顧客ニーズを捉える創意工夫に取り組むために、認定支援機関等と連携しつつ、ものづくり中小企業・小規模事業者が実施する試作開発や設備投資等を支援するものです。

【支援内容】
@補助金上限額: 1000万円
A補助下限額: 100万円
B補助率: 3分の2以内(最高で投資額1500万円まで)
C補助対象経費: 原材料費、機械装置費、外注加工費、技術導入費、直接人件費、委託費、知的財産権等の費用、専門家にかかる費用、運搬費など
※対象経費は自治体の事務局ごとに異なることがあります。

【支援対象】
ものづくり中小企業・小規模授業者であり、以下の要件を満たす者
@「中小ものづくり高度化法」22分野の技術を活用した事業であること
A認定支援機関等に事業計画の実効性等が確認されていること
B顧客ニーズにきめ細かく対応した競争力強化を行う事業であること
※補助要件は自治体の事務局ごとに異なることがあります。

5. 創業補助金制度
 起業・創業や第二創業を行う個人、中小企業・小規模事業者に対して、その創業事業費等の経費の一部を補助する制度です。

【支援内容】
 弁護士、弁理士などの専門家との顧問料や広告費等、創業及び販路開拓に必要な経費等に対して、以下の補助率、補助上限額により補助されます(補助額が100万円に満たない場合は、補助の対象外になります)。
  補助率 補助上限額
@地域需要創造型起業・創業 2/3 200万円
A第二創業 2/3 500万円
B海外需要獲得型起業・創業 2/3 700万円

【支援対象】
@認定支援機関とともに取り組むこと
A以下のいずれかの起業・操業を行うもの
・地域需要創造型起業・創業: 地域の需要や雇用を支える事業を興す起業・創業を行う者
・第二創業: 既に事業を営んでいる中小企業・小規模事業者において後継者が先代から事業を引き継いだ場合などに業態転換や新事業・新分野に進出する者
・海外需要獲得型起業・創業: 海外市場の獲得を念頭とした事業を興す起業・創業を行う者


6. 商業・サービス業・農林水産業活性化税制
 商業、サービス業の設備投資を応援する特別な税制措置です。

【支援内容】
以下のいずれかの税制措置を選択して適用することができます。
@取得価格の30%の特別償却
A取得価格の7%の税額控除
※税額控除は、個人事業者又は資本金3000万円以下の法人のみ。

【支援対象】
@青色申告書を提出する中小企業者等であること
A認定支援機関等から経営改善に関する指導及び助言を受けていること
B対象設備(建物付属設備(1台60万円以上)または器具備品(30万円))を取得したこと


 以上のような支援策は一例に過ぎず、現在数多くの中小企業・小規模事業者支援のための諸制度が策定され、実施されております。具体的には、小規模事業者等の支援、中小企業・小規模事業者の事業再生、ものづくりや海外展開等への新たな挑戦の支援、地域商業の機能強化による地域経済の活性化、資金繰りの支援といった諸対策のために平成25年度の中小企業対策費として1000億円、緊急経済対策(補正予算)として5400億円を超える予算が確保されています。

 また、平成26年度以降の中小企業・小規模事業者政策の柱には、小規模事業者に焦点を当てること、開業率10%台を目指すこと、新たに1万社の海外展開の実現を目指すことなどが据えられています。平成26年度は、こうした方針を踏まえ、小規模事業者支援、新規創業支援、中小企業の海外展開支援を目的とした様々な支援策が策定されることが見込まれます。

 こうした支援策は、今まさに策定され、開始されているところですので、借入金の返済負担等に悩んでいる、新たな事業の展開を考えている、海外展開を考えている中小企業・小規模事業者の皆様には、まずはご相談にいらしていただくことをお勧めしております。

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