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コラム

事業承継をご検討の中小企業の経営者の皆さんへ

弁護士 熊谷恵美

 中小企業の経営者の皆さんは,事業承継の問題について何か対策を立てていらっしゃるでしょうか。対策を立てることなくお亡くなりになった場合,後継者となる相続人と他の相続人の間で相続争いが生じ,後継者が結果として会社を支配できるだけの自社株式を受け継ぐことができず,円滑に事業を営むことができなくなりかねません。

 このような相続争い等の問題が生じないよう,経営者の生前に後継者に事業を承継させる方法として,後継者に自社株式を生前に贈与するという方法が考えられます。しかし,この方法では,経営者が亡くなって相続が発生した後に,他の相続人が,自社株式について自分にも権利がある(遺留分がある)と主張することもあり,後継者が円滑に事業を営むことが妨げられるリスクがあります。遺留分とは,一定の相続人のために,相続に際して,法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで,被相続人(亡くなった方)の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。

 このようなリスクを回避して,円滑な事業承継を可能にするために,いわゆる事業承継法(「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成20年5月16日法律第33号。)」)が制定され,同法の中で遺留分に関する民法の特例制度(以下「特例法」といいます。)が設けられ,話題になりました。

 特例法によれば,他の相続人全員によって,後継者が生前贈与によって自社株式を取得することを認める合意をすることで,相続発生後に,他の相続人たちが自社株式について相続の権利(遺留分)を主張させないようにすることが可能になります。また,これと同時に,自社株式の評価額を合意時の金額で固定する合意をすることで,自社株式に関する納税額が上がるリスクを回避することができます。加えて,事業承継の際の相続税・贈与税の猶予制度(租税特別措置法70条の7,同法70条の7の2)を併用することで,株式に関する納税期限を猶予してもらうことも可能になります。

 ただし,特例法及び納税猶予制度を利用するためには,かなりハードルの高い要件を満たすことが必要ですし,相続人全員の合意後,経済産業大臣の確認や家庭裁判所の許可といった手続が必要になります。また,他の相続人全員に,後継者が生前贈与によって自社株式を取得することを認めさせるためには,他の相続人に,現金等自社株式の代わりとなる財産を用意する必要があるので,必ずしも使い勝手の良い制度にはなっていません。どうやら特例法で一気に解決できるというわけではないようです。

 では,どうすればよいのでしょうか。中小企業の経営者の皆さんが,特例法をはじめ,どのような制度・スキームによって事業を承継させるのがよいかは,それぞれのご事情によって異なり,ケースバイケースといえます。

私ども事務所では,税理士と連携し,貴社にとって最善の事業承継の方法を提案しています。
 事業承継の問題をご検討の経営者の皆さんにおかれましては,ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

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