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コラム

マンションにおける地域コミュニティ活動

弁護士 長森 亨

1. 平成28年3月の標準管理規約の改正

 平成16年1月の標準管理規約の改正によって,管理組合の業務の中に「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」(以下「地域コミュニティ活動」といいます。)が加えられました(32条15号)。この趣旨については,「コミュニティ形成は,日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり,マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって,必要な業務である」と説明されています(27条コメントA)。

 ところが,平成28年3月の標準管理規約の改正の際,この地域コミュニティ活動は管理組合の業務の中から削除されてしまいました。

 このため,これまで地域コミュニティ活動として行われてきた活動が,今後は行えなくなるのではないかという不安が広がっています。

2. 地域コミュニティ活動に代わる活動

 前提として,標準管理規約の改正により,地域コミュニティ活動が削除された代わりに,どのような活動が規定されたのかを確認しましょう。

 改正前の標準管理規約には,管理組合の活動として以下の活動が規定されていました。

【平成28年3月改正前】

32条(業務)

十二 風紀,秩序及び安全の維持に関する業務

十三 防災に関する業務

十五 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュ二ティ形成

 ところが,平成28年3月の改正により,上記の3つの活動が削除され,以下の条項が新たに加えられました。

【平成28年3月改正後】

32条(業務)

十二 マンション及び周辺の風紀,秩序及び安全の維持防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務

 条項の変化を確認すると,改正前の12号・13号の業務は,そのまま改正後の業務に含まれています。そして,改正後の業務から,改正前の12号・13号の業務を除くと,次の点を指摘することができます。

 @改正前の地域コミュニティ活動に代わる業務として「居住環境の維持及び向上に関する業務」が追加された。

 A改正後の業務は「マンション及び周辺の・・・業務」としており,改正後の業務は,マンションだけでなく周辺のものも管理組合の活動に含まれることが明らかにされている。

3. 改正の背景

 それでは,なぜこのような改正がされたのでしょうか。

 その背景として,地域コミュニティ活動について,その用語の定義が明確でなく,地域コミュニティや居住者間コミュニティとマンションの管理との関係性が曖昧であったことが挙げられます。このため,地域コミュニティ活動として,マンションごとに様々な運用がされており,特に活動への管理費からの支出に関して,区分所有者間で意見の対立や紛争が起きやすい状況が生じていました。

 もともと地域コミュニティ活動が管理組合の業務として規定されたのは,地域コミュ二ティに配慮したコミュニティ形成がマンションの適正な管理に資するからであり,あくまでマンションの管理の範囲内で行われることが想定されていました。しかし,上記のように,地域コミュニティ活動が拡大解釈されて運用され,紛争が起きやすい状況が生じてしまっていたことから,今回の標準管理規約の改正によって,もともと企図していた活動に限られることを明確にしたということができます。

 したがって,標準管理規約の改正によって,従前行われていたコミュニティ活動が全てできなくなってしまったものではありません。むしろ,本来地域コミュニティ活動として意図されていた業務を定義し直すとともに,従前地域コミュニティ活動の名目で行われていた本来は許されない活動が,管理組合の業務に含まれないことを明確化したものといえます。

4. 許される活動,許されない活動

 では,どのような活動が許されて,どのような活動が許されないのでしょうか。

 まず,標準管理規約のコメントでは,許される活動について,「マンションやその周辺における美化や清掃,景観形成,防災・防犯活動,生活ルールの調整等で,その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は,区分所有法3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び付属施設の管理」の範囲内で行われる限り可能である」とされています(第32条関係G)。

 後半の「管理組合の目的の範囲内で行われる限り」の部分が分かりづらいですが,あくまでマンションの建物と敷地の管理と関係がある活動でなければならないと理解すれば良いと思います。もっとも,業務には「周辺」のものも含まれていますので,マンションの建物と敷地の管理に関係していれば,敷地内での活動に限定される訳ではなく,敷地外で行われるものも含まれることになります。

 次に,同コメントは,許されない活動について,「マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。例えば,一部の者のみに対象が限定されるクラブやサークル活動経費,主として親睦を目的とする飲食の経費などは,マンションの管理業務の範囲を超え,マンション全体の資産価値向上等に資するとも言いがたいため,区分所有者全員から強制徴収する管理費をそれらの費用に充てることは適切ではな」いとしています(第27条関係C)。

 費用支出に関する記述ですが,管理組合の業務として許されるのであれば,費用支出に問題はないはずですから,こうした活動は許されない(管理組合とは関係のない個人の活動として行うべき)ということになります。

5. 今後の整理

 このように,今回の標準管理規約の改正により,本来「地域コミュニティ活動」として予定されていた業務が明確化されました。このため,従来行われていた活動の中で,厳密には管理組合の業務といえないものについては,段階的に整理をして,管理費をもって行う管理組合の活動ではなく,参加している個人の活動として整理していく必要があります。

 なお,標準管理規約の改正によって「地域コミュニティ活動」が禁止された訳ではありませんので,直ちに標準管理規約の表現に合わせた規約改正が必要になる訳ではありません。従前の規定であっても,今回の標準管理規約の改正の趣旨の範囲内で運用がされていれば問題はないと考えられます。

以上

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