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コラム

マンションにおける民泊の問題

弁護士 長森 亨

1. 民泊とは

 自宅の全部又は一部を旅行者などの第三者に提供して宿泊させる,いわゆる「民泊」が話題となっています。

 歴史的には,民家の提供者の善意によって無償で行われていたもののようですが,現代的には,宿泊料を受けて行うことを意味するのが一般的です。

 インターネットの普及によって需要者と供給者のマッチングが容易になったことに伴って,日本においても,民泊サービスを提供する者が増える一方,民間のこうしたサービスを規制する法制度が不十分であったことから,民泊に対する規制が問題となっています。

2. 民泊に対する法規制

 旅行者等に宿泊施設を提供する営業に関する法律としては旅館業法がありますが,この法律は,ホテルや旅館など,相応の施設を設けて宿泊サービスを提供する営業を想定しており,民泊のように,通常の住宅のまま宿泊の用に供するようなサービスを想定していませんでした。

 このため,一般的に行われる民泊に旅館業法を適用すると,ほとんどが旅館業法に違反することになります。

 この事態に対応する方法としては,@あくまで旅館業法を基本として民泊を規制していく方法と,A民泊を可能とするように法規制を見直す方法とがありますが,日本では,Aの方法を選択しています。まず,国家戦略特区法により旅館業法の特例を定め,自治体が定めた条例に従った認定を受けることにより,旅館業法の規制を緩和した条件で民泊営業を行うことを可能にしています(いわゆる「特区民泊」)。また,平成28年6月2日に閣議決定された規制改革実施計画の中で,民泊に対応した新たな法律によって民泊を可能とすることとし,新法によって旅館業法とは別の法律による規制を目指しています(いわゆる「新法民泊」)。

3. マンションにおける民泊の問題点

 このような法規制の問題とは別に,マンションにおいて民泊を行うことができるのかという問題があります。

 多数の人間が同一の建物内に居住空間を有するマンションにおいて民泊が行われると様々な問題が生じます。

例えば,マンションの居住ルールを理解しない者が宿泊することにより,騒音,ゴミ問題などトラブルが起きやすくなりますし,外国人観光客が利用する場合,文化や慣習の違いから,こうしたトラブルが一層起きやすくなります。また,外国人観光客が海外特有の病気や感染症などを持ち込む危険性も否定できません。

 こうしたトラブルが頻発するようになれば,マンションの風紀や住環境が悪化し,資産価値が下がることにつながることになりますので,マンション管理の上でも無視できない問題といえます。

4. マンションにおける民泊の可否

 本来,区分所有権を有する専有部分は,区分所有者が自由に利用することができるものですが,多数の者が居住空間を区分所有しているマンションにおいては,他の区分所有権との関係で制限を受けることになります。

 これは,マンションの管理規約において,専有部分の用途についてどのような制約を設定しているのかという問題といえます。

 標準管理規約に準じた管理規約を有する一般的な居住用マンションでは,専有部分の用途について,「区分所有者は,その専有部分を専ら住宅として使用するものとし,他の用途に供してはならない」(標準管理規約12条)という規約が定められていると思われます。

 「住宅として使用」とは,専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断されます。

 したがって,民泊のうち,民泊用にマンションの一室を購入し,自らは居住せずに,民泊専用に使用するような場合は,「住宅としての使用」とはいえませんので,上記規約に違反しているといえます。

 自らマンションに居住しつつ,専有部分の中の1部屋を民泊に提供しているような場合,提供者自身はマンションに生活の本拠をおいているため,「住宅として使用」しているとはいえます。この場合は,「専ら」住宅として使用しているかが問題となります。

 この場合,提供者自身が生活の本拠として利用している以上,その中の1部屋を民泊に提供しても「専ら住宅として使用」していることに変わりはないという考え方もできますが,専有部分の一部を第三者の宿泊用に開放するという民泊の形態からすれば,基本的には,民泊としての利用は「専ら住宅としての使用」には該当せず,規約違反になるのではないかと思われます。もっとも,実際に規約違反といえるかは,当該民泊の利用形態のほか,マンションにおける現実の商業利用の実態等,個別の事情によりケースバイケースの判断とならざるを得ません。

 前記のとおり,政府としては民泊を許容する方向で法改正等を行っていることに鑑みると,標準管理規約に準じた規約によって,民泊が禁止されていると解し得るとしても,規約解釈の争いの結論次第でどちらにもなり得る状態をさけるために,民泊が禁止されていることが明らかになるよう,規約改正を検討した方が良いと思われます

以上

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